レオニスの泪
「なっ…」
そういえば、あの日倒れた後、自分がどうなって、神成の車に乗せられて、慧を迎えに行ったのか、聞いていなかった気がする。
自分は知らないその現場を、まさか木戸に見られていたとは、運が悪かったとしか言えない。
「…彼氏?」
「ちがっ、違います…」
自分が不甲斐ない。
こんなことで、乱される。
悔しいが、どうにもできない。
自分だって、ただの人間の一人に他ならない。
「…俺、一応権限はあるんだよね。葉山さん1人動かす位、ワケない。職務怠慢、加えて勤務地の医者とデキてるって、あんまよくないよね?たまにここに顔出すこともあるみたいだし?」
言いながら、木戸はポケットの中に手を突っ込んで、私の反応を窺うように見つめてくる。
「さっきから違うって言ってますよね。ー一体何が言いたいんですか。」
できるだけ冷えた声音を出した私に、前に立つ彼は笑って応えた。
「俺と付き合って。」