レオニスの泪
「は…」
久々に、息がしづらい。
ロッカーの取っ手に掛けた指先が震えている。
ーなんで、自分は女なんだろう。
つくづく、嫌になる。
笑いにも似た不規則な呼吸が治まらず、結局荷物を取り出すことすら諦めて、床にくたりと座り込んだ。
男に生まれていたら良かった。
そしたら、こんなに傷付かないで済んだかもしれない。
そしたら、もっと強かっただろう。
もっと、何かを目指していたんじゃないだろうか。
そこまで考えた所で、力なく頭を振った。
ー…駄目だ。
そしたら。
「慧が…居なくなっちゃう…」
絞り出すように唇から落ちた言葉は、ほぼ、音にならなかった。
なんて生きにくい世の中なんだろう。
なんて、狭くて辛くて狡くて汚いんだろう。
窮屈過ぎて、酸素が薄い。
ガン、とロッカーの戸を、八つ当たりするように叩く。
この世界では、空気を吸う事すら、代償を伴う。