レオニスの泪
夜の、診察。
公園が診察室で、医者と患者は立ち話。
滑稽な光景だろうなと思う。
けれど、昼間よりも、いや今までのどんな時よりも、すんなりと自分の症状を伝えることができた気がした瞬間だった。
「そうか。それは、辛いね。先週から、ということだけど、何かきっかけになる事とか、思い当たることはある?」
神成も神成で、淡々と質問していく。
「…職場の上司に…」
そこまで口にして、その先を言うのに僅かに躊躇いが生じた。
濡れた瞳から、迷うように目を逸らす。
「祈さんから聞いたことを、僕が外部に漏らす事は絶対にないから、もし良かったら教えて。」
そんな私の不安を読み取ったかのように、神成が柔く促した。
お陰で揺らいだ思いを、軌道修正し、口を開く。
「告…白されて、一度断ったんですけど…先週付き合ってくれないと異動させるか、辞めさせるか、みたいなことを言われて…」
木戸がどこまで本気で言っているのかはわからない。
だが、思いの外、あの日の出来事はダメージが大きかった。