レオニスの泪
かといって、それを他者に伝えても、まして精神科医に話しても、何にもなりはしないと言う事は分かっている。
だけど、誰かに言いたかった。
ぶちまけたかった。
社会は理不尽だ、と。
自分なりに、神成の応えとして予想していたものは、『それは大変だね』とか、『それでどう思ったの?』とか、『これからどうするつもり?』等だったのだが。
「………」
反して、神成は沈黙という選択をした。
気まぐれに吹いた風が、2人の髪を、それぞれ掠めて行く。
ーは、恥ずかしくなってきた…
何考えてるんだかわからないベビーフェイスを前に、段々パニックになってきた自分。
「そっ、その人、結婚してるし!ほんっと誠実じゃないっていうか…はは、だから、私なんかもちょっと頭に来ちゃって。。それでえっとその…また断ったんですけど…離婚したら考えてくれるかって訊かれちゃって…私はそんな価値のある女じゃないですって言って話終わらせちゃってそのままにしちゃったんですけどね…」
何言ってるんだかわからない。完璧混乱している。
「けどっ、無職になったら困るな、とかやっぱり不安、でっ…」