レオニスの泪
神成に話せて、泣けているのは、別に素直になれた訳じゃない。
限界は疾っくの疾うに通り過ぎている。
四面楚歌だった私に、逃げ道を作ってくれてしまった彼に、自分が頼って依存し始めているからだ。
人が楽な方へと傾いていってしまうのと同じで、己から甘えが、滲み出てしまったからだ。
どうせは、手放さなければならなくなるのに。
形はなくて、いつの間にか失くなってしまうのに。
どうしてそれはこんなにも。
心地良く、ヒトの心に落ちるのか。
「ー駄目…」
本当はしがみついて、引き寄せてしまいたくなる衝動を抑えて、逆に神成の身体を押した。
「祈さん?」
俯いたままの私の目に映るのは、神成の靴、公園の砂。
頭上から聞こえるのは、優し過ぎる程柔らかい、気遣うような声。
「こんな…母親は、駄目です…」
歯を無意識に食い縛って、流れ出してしまいそうな感情を堰き止める。