レオニスの泪
「祈さんは、慧君が泣きたい時、我慢して欲しいって、思うの?」
「ーえ?」
顔を上げると、眼鏡を掛けていない神成が、穏やかな表情でこちらを見ていた。
目が合っても、相変わらず小さい子にするみたいに、頭を優しく撫でている。
「慧君が、辛かったり苦しかったりする時に、誰にも頼らずに、感情を押し殺して欲しいと思うのかな?」
「そんなわけっ…」
彼の言いたい事が、徐々に見えてきて、言い掛けた言葉を飲み込んだ。
「大人は、、、いや、親は確かに無闇矢鱈に泣き顔を見せるべきじゃないのかもしれないね。でも、親が思っているより、子供は親の事を見ている。それも、言っていることじゃなく、やっていることを。教えたいことじゃなく、親が隠したい事を。」
何を考えているのか、一度も見えたことのない、深く輝く瞳が、キラと揺れる。
「祈さんがいつもと違う事も、様子がおかしいことも、毎日していた癖をしなくなったことや、笑顔が消えたこと。全部気付いてる、わかってる。でもー…耐えるんだ。祈さんのいない所で、ひとり。それが、今祈さんが慧君に教えている《生き方》だ。」