レオニスの泪
両親からしてみれば、そんなつもりはなかったのかもしれない。
でも、私にはわからなかった。
愛されてる、なんて感じたことはなかった。
多分、何もかもが当たり前で。
その中での繋がりなんて気付かなくて。
遠くから見守るという愛の形も知らずに。
すぐ側で、直接愛を注いで欲しいと願っていた。
家族の枠が窮屈に感じて、外の世界へ出て行きたくて、親に隠れて高校近くの書店でアルバイトをした。
本も好きだったし、働く事は、嫌いじゃない。
すぐに仕事も覚えて、楽しかった。
大人の仲間入りをして、まるで一人で生きていけるような気がしていた。
そして、一年経った頃。
「すみません。欲しい本の取り扱いがあるか訊きたいんですけど。」
屈み込んで本の陳列をしていた私が顔を上げると、学生らしき男性が立っていた。
ハーフのような顔立ちで、短髪で黒髪。
ー顔が完全に左右対称だ。
束の間、そんな事が頭を過ぎり、困惑している表情の相手に気付いてはっと我に帰る。
「…あ、っとはい!今お伺いします!っとと」
慌てて立ち上がったせいで、よろけた所。
「大丈夫ですか。」
大きな手で、肩を支えてもらう結果となり、恥ずかしい思いをした。