レオニスの泪
不思議に思って、開いた掌の上。


小さく折り畳んである紙が乗っかっている。



「…これ…」



何ですか、と視線を上げると、私の様子をじっと見ていたらしい彼と、がっつり目が合った。


束の間、時間が止まったかと思った。


彼の視線が、動かなかったから。


何故か見つめ合う形になって、気恥ずかしくなった私は、自分から目を逸らし、その紙を開く。



「ーえ…」



書かれていたのは、彼の名前と、携帯の番号。それからメールアドレスだった。


もう一度顔を上げた私と、目が合った彼は、今度は緊張した面持ちで口を開く。



「ーもし、良かったら、連絡くれませんか。」



店の中の様々な音が、一気に遠退いた。



「無理にとは言わないので、、良かったら…俺と知り合ってくれませんか。…好きなんです。」



「…は」




ー人は。



どこをどうしてどうなって、誰を好きになるのか。


そんなこと、知らなかった。


ただ、色白の彼の耳までが、じわじわと赤く染まっていくから、冗談や嘘ではないことは分かった。


人生で初めて、人に告白されて、それが自分でもまんざらでもなくて。



ふわふわした気持ちに浮かれて、単純に嬉しかった。

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