レオニスの泪
大学生だった彼との交際は、まるで決められていたかのごとく、すんなりと始まった。


元々ずっと前から、私のいる時間帯を狙ってきてくれていた事、欲しい本に便乗して、勇気を出したこと。


付き合うことになった日、彼はその事実を照れ臭そうに、話してくれた。


誰かが自分を必要としてくれている、好きでいてくれている、そういう感覚は、何せ心地良かった。


高校生の自分からしたら、大学生なんて大人に見えて、背伸びしてでも良いから、少しでも横に並べるようになりたくて、疑うこともせずに、ただただ恋に身を任せていた。


寂しさで出来た穴も、劣等感に苛む日々も、失った居場所も、彼の隣にいる間だけは、全部埋め合わされたような気がして、安心出来た。



今も一緒なら、当然将来も一緒だと、馬鹿みたいに信じていた。


それくらい、真っ直ぐに、真っさらに、人を好きになった。



浅はかだった、恋とは愛とは、若いうちに何の約束もないまま、安く売り飛ばすものではなかったのだと気付いたのは、もう少し後の事だった。
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