レオニスの泪
ほぼ、家に帰ってこない夫を待ちながら、働いて働いて働いた。

乳児の育て方も全く分からず、一人で壁にぶつかって、その壁が倒れてきて、潰されて、一人でなんとか這い出した。

昼夜を問わず泣き止まない我が子を抱きながら、自分も泣いた。

誰も頼れなかった。

誰も助けてくれなかった。

だからがむしゃらに。

出来ることも、出来ないことも、片っ端からやっていった。


そしたらー。



『祈は、いいよ。出来るから。』


勇吾が家に忘れていった携帯が鳴って、取ったら女で、大学に来いと言われて行った時の出来事だった。


勇吾は自分の物だと目の前で見せつけたかった女が仕組んだ事だとも知らずに、彼は彼女をかばった。



『祈は一人でなんでもやっていけるじゃん。だけど、この子は無理なんだよ。俺が居ないと。』



もう、涙も出なかった。


だから、笑った。



『母親は、弱くちゃやってらんないの』と言い捨てて。
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