レオニスの泪

塞がらない傷は、何度も何度もかさぶたにはなるけれど、何度も何度もはがれて血が出る。


二人じゃなくて、三人になることが、どうしてこんなに辛い事なのか。

増えて幸せそうに笑い合う家族は沢山居るのに、どうして私達はそうじゃなかったんだろう。



振り返り、泣き喚いて、自分は何て不幸なんだと、全く思い通りにならなかった、幼い時こんな人生を自分が歩むと夢見ていたわけじゃないと、叫びたい衝動に駆られても。


それは慧を否定することに繋がる気がして出来なかった。

無意味だということも、知っていた。

それ以前に、涙が出なかった。



たった一度、一人の人を好きになった。
たった一度間違った。


それだけで180度人生が変わった。

そして、恐らく慧を『普通』より幸せに出来ていないのではないか。


過去を清算できていないと薄々頭のどこかで感じていても、日々に追われ、面と向き合う事はしなくて済んでいた。


そしたら、心が悲鳴をあげて、私の息を止めた。



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