レオニスの泪

ー強くなる為に、必要な、涙。


神成の言葉を心の中で繰り返した。


涙なんて、ずっと弱さの象徴だと捉えてきた。

そんなもの、恥だと。


けれど、ざんざか泣いた今。



ー泣く事は、心を洗うこと…



神成の言うことを、素直に受け止めることが出来るような気がした。


自分の弱さを認めることが出来て初めて人は強くなれると、彼は以前言った。


あの時の意味は、こういうことだったのか、と、漠然と思った。


それがわかると、不思議と恥ずかしいという感情は遠退く。



「…もう一度、訊くね。」



少し開いたお互いの距離。

神成の瞳が、静かに揺れる。






「ー彼に、会いたい?」





急に、風がヒュゥと横切って、木々や葉が、ザワザワと音を立てた。



まるで、私の心が、ざわついたかのような錯覚に陥りそうになる。


内奥の感情との対面。

向き合えず、見ないようにしていた物への答えは。


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