レオニスの泪

待つことを、止めてしまったら。

自分は、支えを失うことになってしまわないだろうか。


そう考えると、不安で。



「虚像の、柱?」



眉間に皺を寄せて考え込む私に、神成が、再び問い掛ける。




「虚像…」



口に出して繰り返しながら、神成を見つめると、彼はやけに切ない顔をしていた。

いつになく、感情が漏れていた。



「君も、持ってるんだ。それを。」



神成の、言いたい事が掴めなくて、伝えるために軽く首を傾げて見せる。



「ー僕も、持ってる。」



見つめ合った形のまま、はっきりと神成はそう言った。


救急車のサイレンが、遠くで鳴っているのが聞こえる。



「ー何…」


何を言っているの、と口を開きかけた所で、重ねるように、神成が応えた。



「あるように見えるのに、決して訪れてくれない希望。」




ドク、と心臓が大きく動く。




「叶わないのに、拠り所にしている、支柱。」



本当は支えなんて、在りもしないのに。
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