レオニスの泪

「あとーもし無職になったら、僕の所にハウスキーパーに来てくれればいいよ。」


「はぁ…っはぁ?!」

帰ろうか、とでもいうように、くるりと背を向けた神成が、さらりと提案。

反射的に、適当に頷いて、直ぐに声がひっくり返った。




「なっ、からかわないで下さいっ。冗談キツイです。」



慌てて抗議するが、数歩先の彼はチラと顔だけこちらを振り返りー



「本気だけど?」



「!?」





何言ってんの、みたいなニュアンスで返してくる。


そして、両手をポケットに突っ込み、思案するように空を見上げた。




「ま、それだけじゃ、大変だろうけど…何年かしたら僕も開業しようかなぁと考えたりしてるし、そこで雇ってあげてもいいよ。」




「止めてください、そういう…同情っていうか、、、そういうの…」


「同情は、悪い意味じゃないけど、同情からじゃないよ。単に祈さんは仕事出来そうだから。」



あっけらかんとした口調で、私の動揺ぶりにも気づかない。
< 220 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop