レオニスの泪
挙句。



「さ、そろそろー帰らないとね。」



その場に立ち止まったままの私を、今度は体ごと振り返って、待ち姿勢。



「まだ、仕事失ってないですから!」



私は、恥ずかしいような、嬉しいような、腹が立つような、歯痒い思いが重なり合って、結局ぶつくさと文句を言いながら、神成の隣に並んで歩き出す。


それに合わせるように、神成も歩く。



「…一個訊きたいんですけど。」



やはり少し寒い気がする夜道、私はさっき気にかかった事を訊ねることにした。


「何?」



「私…同情ってあんまり良い意味だと思ってないんですけど…さっき悪い意味じゃないって言ったのはどうしてですか。」



あぁ、と小さく呟いて、神成は、前を見ていた視線を、下にずらした。




「同情は、自分以外の人の苦しみや悲しみを思いやって、それを少しでも軽くしてあげたいっていう気持ちだから、そう言ったんだ。だから、僕は良い意味だと思う。」

< 221 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop