レオニスの泪
コル・レオニス



日中の、残暑の厳しさも幾分和らぎ。



日射しはまだきついものの、どこかしら影が感じられるのは、秋と一緒に、冬の気配が近づいてきたからかもしれない。



「……季節の移り変わりは、早いね。」


ブラインドの隙間から入る光に目を細めながら、独り言ちた。


そして、思う。

珍しいなと。


ここ何年もーあの日以来ー部屋で声を発する事なんてあっただろうか。


秋めいた衰えつつある陽の光につられて。




ー感傷的になってるのかな。




自己分析しながらネクタイを締め、棚の上の、車のキーを取る際、光る二つのリングを目で撫でる。




並べてある意味なんて、もうないのに、仕舞うことすら出来ず、引っ越してきた際にも、そのまま置いた。






僕は、今日も、薬指に指輪をはめて、職場へと向かう。





< 226 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop