レオニスの泪
コル・レオニス
日中の、残暑の厳しさも幾分和らぎ。
日射しはまだきついものの、どこかしら影が感じられるのは、秋と一緒に、冬の気配が近づいてきたからかもしれない。
「……季節の移り変わりは、早いね。」
ブラインドの隙間から入る光に目を細めながら、独り言ちた。
そして、思う。
珍しいなと。
ここ何年もーあの日以来ー部屋で声を発する事なんてあっただろうか。
秋めいた衰えつつある陽の光につられて。
ー感傷的になってるのかな。
自己分析しながらネクタイを締め、棚の上の、車のキーを取る際、光る二つのリングを目で撫でる。
並べてある意味なんて、もうないのに、仕舞うことすら出来ず、引っ越してきた際にも、そのまま置いた。
僕は、今日も、薬指に指輪をはめて、職場へと向かう。