レオニスの泪
昼を大分過ぎてからやっと取れた休憩時間。
風に当たりたくなって、屋上へと赴く。
煙草を吸わない僕は、手に珈琲缶を持ち、誰もいないベンチに腰掛けた。
「ふー…」
疲労から来る溜め息と同時に、肩を背もたれにぐっとかけて空を仰ぐ。
空は、今日も、青い。
そして、その中に、探しているものは、いつも見つかることはない。
多分、これから先もきっと。
ー『先生は、誰を待っているんですか?』
流れる白い雲にぼんやりと。
つい先日、紛れもなく僕が、投げかけられた質問が、蘇る。
答えずに、はぐらかしたけれど。
答える気はないから。
ーこのまま、僕は祈さんとどうやって関わろうと考えているんだろう。
これ以上関わると、葉山祈は、益々疑問をぶつけてくることだろう。
元々厄介な患者だった。
向こうから居なくなってくれたなら、それは好都合だった筈なのに。
どうして、自分は彼女と関わろうとする?
こんなにまでして。