レオニスの泪
もうそろそろ良い歳だから、身を固めたらどうかと、周囲から勧められる。
自分としてはなんとも思っていなかったし、どうしようとも思っていなかったが、どういう訳か、この春に個人病院の院長の娘を紹介されることになった。
かなり無理矢理で、向こうは僕のことを知っているらしいのだが、僕は相手のことを何一つ知らなかった。
その話と日程を一方的に聞かされた後で、僕は非常に憂鬱な思いを抱え、中庭を通った。
葉山祈と出逢ったのは、まさにその時だった。
第一印象は、危ない、だった。
ふらふらと歩き、呼吸もままならない。
そんな女性が、春先の新緑に囲まれていて良いわけがない。
「ちょっと!」
慌てて駆け寄ると、その状態のまま、倒れそうになる彼女。
「大丈夫…じゃ、ないね。」
大丈夫ですかと言いかけて、打ち消しながら、抱きとめた。