レオニスの泪
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仕事を終えて、病院の駐車場に着いたのが、午後11時過ぎ。

なんとなく、朝と同じように、レクサスの位置に目をやった。




ー珍しいな。




この時間帯、普段ならとっくに居なくなっているその車は、何故かまだ在った。




ーやっぱり同業者だったかな。




直ぐに目を逸らして、車に乗り込もうとした時。



「すいません」


突然声が掛かって、驚いた。

僅かな電灯しかない駐車場は暗い。更に人の気配が無いのに、こんな風に声を掛けられたら、それなりに心臓は跳ねる。



「ー?」


振り返って見回してみると、まさに今しがた見ていたレクサスから降りてきた男が、こちらを見ていた。


そう、朝にも会った、スーツの男、だ。



「ー何か?」


朝から知り合いだろうかと、必死で記憶を手繰り寄せてみはしたが、どうもヒットしなかった。

それでもこんな風に話し掛けて来るということは、重要な知り合いだったのかもしれない。

恐らく、この男は自分の事を待っていたようだから。
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