レオニスの泪
が。
ーいや、重要じゃないか。
直ぐに思い直す。
真っ当な理由で用事があるなら、アポを取って来る筈だ。
わざわざこんな所で、しかも人気がなくなる非常識な時間帯に、待ち伏せをするなんて、決して褒められたことでは無い。
年齢は恐らく自分より若いが、外見から判断するなら、自分の方が若く見られているに違いなかった。
背も自分より僅かに低いくらいか。
「すいません、お帰りの所を、呼び止めてしまって…」
冷徹そうに見える男は、目尻に皺を寄せて、すまなそうに謝罪する。
疲労感はあったが、背を愛車に預け、警戒する。
「ーいえ。それで、何でしょうか。手短にして頂けると助かります。」
やや低い声でそう言えば、相手は、頷いた。
「勿論です。お訊ねしたいことがひとつだけ、ありましてーうちで雇っている派遣のことなんですけどね。」
「派遣?」
なんだ、どういう話だ。さっぱりわからない。
うちってどこのことだ。
そしてその派遣が僕とどう関わってくるというんだろう。