レオニスの泪
「お話の意図が分かり兼ねますが。」
冷ややかに言うと、男は肩を揺らした。
「そんな怖い顔しないでくださいよ。こちらとしても、雇った派遣が職場の風紀を乱しているとなると、調査せざるを得なくてですね…」
「その方と僕の間に繋がりがあろうがなかろうが、貴方にお話する義務はありません。失礼。」
返事を待たずに、車に乗り込んだ。
途端に言い様のない苛立ちが自分を襲う。
ーあんなのの下で、祈さんは働いているのか。
エンジンをかけ、直ぐに走らせ、駐車場を出る際、ちらりと一度だけ目をやれば。
男はレクサスに寄りかかり、こちらを見ていた。
ーあれは、厄介だな。
かなり執着している。
それなりの社会的立場がある人間が、既に常識を外れて、こんな時間にわざわざ行動するとは。
歪んではいても、限りなく本気に近い思いで、欲しがっているのは間違いない。
結果、権力を振りかざして、無理矢理手に入れようとしている。