レオニスの泪

ーーーーー?





ふと湧き出た自分の感情に気付き、信号待ちで、しばし呆然とした。


自分は今、何を思っただろう。


こんな感情はとっくの昔に捨て去った筈なのに。



その考えを否定するように、頭を横に振った。


ーただ、似てるだけだ。だから記憶が呼び覚ますんだ。



信号の赤い光が、自分を現実に引き戻させる。


だけど、どうする?

どうしたらいい?


守るにはどうすれば?


患者としてー


そう思った途端、皮肉にも、青に変わる信号に、何故か笑えた。


そうだよな、と。


自分はまだ許されない。
いや永遠に。

そして、そうする気も、更々持っていない。

今迄、無理矢理なんとかしようとしたって、どうしようもなかったんだから。

ーあの時だって、諦めながらも、渋々承知したのに。

例の見合い話を強引に進められ、しかも同業で他県で女医をやっているという、やりにくい相手と食事の席を設けられた時だ。







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