レオニスの泪

『貴方自分が何言っているのかわかってるの!?』


ヒステリックに喚く女を前に、うんざりした。

ーほんと、無理だ。この女。受け付けないって次元じゃない。


『どう考えれば良いの?!やっぱり無理ってどういうこと!?』


普段、余り争いごとは好まない。

と言うより、自身の感情を悪戯に荒らす真似はしない。

ただ、それは、物事をうやむやにしてしまうとか、意思表示をしないのとは違う。


できるだけ無駄に力を浪費したくないというだけで、必要ならば、はっきりと伝える。


『五月蝿いね。』



患者相手にはオブラートに包んでも、それ以外なら、そんな丁寧さも要らない。僕はそう思っている。




『最初から無理っぽかったけど、纏わり付くから仕方なく一緒に帰っただけ。ただの勘違い。逆に迷惑なんだけど。』


二の句を継げない女と、一刻も早く離れたくて、別れの言葉を直ぐに続ける。



『話は終わり。もう2度と会うことはないと思うのでさようなら。お気を付けて。』

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