レオニスの泪

「おーー！来たか！ま、ま、座れよ。ほら。」



女三人と談笑していた男ー久世 諒太（くぜ りょうた）が、既に赤い顔しながら手招きする。


「遅くなってごめん！こいつがトンズラしそうだったからさー」


大袈裟に両手を合わせて謝罪する岩崎の背後で、僕は顔を背け、濡れ衣を着せられた事に、諦めにも近い溜め息を落とす。


「よく捕まえた！神成、トンズラは良くないぞ。」

「……」


無駄に元気な久世の返しにも、反応する気になれない。

そのまま、久世、岩崎の隣に仕方なく腰掛ける。


「何飲みます？」


向かいから訊かれて、初めて顔を上げて見ると。


「アカ、俺にも訊いて？俺部長、一応部長。」


肩に掛かるか掛からないか程度の、ダークブラウンの髪色の女が、僕をじっと見つめていた。


「神成、この子、広瀬朱李って言うんだ。今度入ってきた歯学部の子。」


「初めまして。」


岩崎に自己紹介されるのを受けて、朱李は照れ臭そうにはにかみながら小さく頭を下げる。