レオニスの泪
「ほらほら、先輩!あれです!見えますか?あれがレグルスです。きれいでしょう?カッコいいでしょう?」


酒が入っているのがタチが悪い。

車だったら星空なんか見ないでひとっ走りすれば良かったのだ。

飲酒してしまったために徒歩で送るわけだから、ゆっくりと空が見れてしまう。


「そうだね…」


前を向いて歩かずに、空ばかりを指差す朱李を横目に、僕は小さく息を吐いた。


ー明日から実習なんだけどな。


煩わしすぎる。

さっさと送って帰りたいのに、一向に進まない。



「…君の話によると、そのライオンは化けライオンで、首を絞めて殺されたんでしょう?そんなに好きになるような奴じゃないと思うけど。」


この際否定してみたら、近道に繋がるかもしれないとはっきり言ってみる。


「いえ!それは、ただの馬鹿馬鹿しい神話で!化けライオンではないのです。」



ーあれ。もしかしてこれは…



「ではどうしてそう思うか、説明してあげます!まずほら、空をちゃんと見てください!」



ー失敗したらしい。



急がば回れだったな、と悔やんだが、後の祭りだった。
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