レオニスの泪
岩崎と呑んでから、一週間後。
葉が、赤く黄色く染まり、ハラハラと落ちたり、落ちないでなんとか踏みとどまっていたり。
ー眠。
中庭に置かれたベンチに横になって、分厚い医学書に目を通していた僕は、重い瞼に少しの抵抗もせず、開いたままの本を顔に乗せた。
酷使された身体は、あっという間に暗闇にひきずりこまれ、夢も見ない程、深く落ちていく。
それからどのくらい経ったのか。
「……ぱい」
誰かに呼ばれたような気がして、意識が僅かに戻る。
ー誰?
それでもまだ眠りたくて、再び闇が迫るも。
「伊織先輩。そろそろ夕方ですよ。」
寝不足の頭に、不思議とその声はふわりと響いた。
同時に光が差し込んだ。
眩しさから薄っすら目を開けば、朱李がにっこりと笑って、僕を見下ろしていた。
「さすがに身体冷やします。」
取り上げられた僕の本は、細い腕の中に仕舞い込まれている。