レオニスの泪
「…アカとは上手くいってんの。」
朱李の話を、今頃になってまた岩崎から訊かれるなんて思ってもなかった僕は、思い切り怪訝な顔をした。
「そんな顔すんなよ。実は、俺は今日このことを話しに、忙しいお前を呼んだんだ。」
いつもは、どこかしら余裕を感じさせる位笑みを絶やさない岩崎から、すっかり笑顔が消えていて、これから話そうとする『何か』が、それほど真剣ことなのだと匂わせた。
しかし。
解せない。
岩崎にとって、朱李はただのサークルの後輩に過ぎない。
今迄にも、朱李の口から岩崎が出てきた事は、一回や二回程度。出逢って間もない頃は、僕がたまに登場させた。
その、岩崎が。
朱李について、一体何を知り、何を僕に伝えようとしにきたのか。
今更。
「ほとんど家に帰れてないけど、朱李とは一緒に住んでるよ。」
迷った結果、時間ももうないことに気付き、仕方なく現状を話すと、岩崎は、難しい顔を、更に険しくさせた。