レオニスの泪





幼い子供は、世界を知らない。



じゃぁ、どうやって世界を知るの。



最初はどうやって世界を観るの。




それは、父から、母から、教わるの。







―自分は、慧の世界だ。







そう思ったのは、いつのことだったろう。




なんて大きな仕事なんだろうと、抱えきれるか不安になるのはいつものこと。




親の目が、健全でなければ、世界はあっという間に真っ黒になってしまう。


親が教えなければ、他人が教えてしまう。


歪曲された真実だと、遠回りさせてしまう。



見るべきものと、見なくていいものを、取り違えてしまう。



綺麗な目を、汚してしまう。




ねぇ、慧。



今、慧の目に、世界は何色に映ってる?



ママはあなたに何を見せてあげられている?



あなたにとっての世界に、黒い雨は降っていない?



赤い血でめちゃくちゃになっていたりしない?





ちゃんと、無限で、青くて、光輝いている?





ママの目に、世界はそう見えていないのに、慧の目にはそう映っていて欲しいと願うママは、やっぱり母親失格だね。


< 29 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop