レオニスの泪





「ギリギリ、珍しいね。息子?」


なんとかセーフで更衣室に入ると、ちょうど金森が着替え終わった所だった。


「…あ、いえ、その…出がけにバタバタしまして…すいません…」



「そう。ま、何かあったら遠慮しないで言ってね。」




バタン、音を立てて、金森のロッカーの扉が閉まる。



「ありがとうございます……」



複雑な思いでなんとか頷き、自分のロッカーを開けた所でー



「そういえば葉山さん、木戸さんに何か言われた?」


「え…」


不意打ちを食らう。

なんでって、そのことが、すっぽ抜けていたからだ。

神成のことで悩んでいる場合ではなかった。

そしてそのことでこんなにもー木戸との一件が些細な事に思えている自分に驚く。


「何かっ…て、何ですか?」



困惑気味に訊き返すと、金森はああいいのいいのと手を振る。


「何もないなら良いのよ。」
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