レオニスの泪
「木戸さんよ!」
言われて、一瞬、誰の事だか分からなかった。
「…え…」
どういうことだろう。
木戸が。
離婚…
『-離婚したら、考えてくれる?』
背筋が、ヒヤリとした。
いや、まさか、本気で言っていた訳じゃないだろう。
私の為じゃないだろう。
まさか。
そんなわけ…
「あれ、葉山さん、どうしたの?顔が真っ青よ。」
笹田が、心配そうな顔をして、顔を覗き込んでくる。
「あ、大丈夫です…えっと、あの、、ちょっと…」
駄目だ。
こんなことで。
こんな場所で。
仕事なのに。
こんな理由で。
抑えないと。
駄目だ。
ここで、出てきては、駄目。
焦れば焦るほど、コントロールの仕方が分からなくなる。
「葉山さん?!」
息が、出来なくなる。
苦しくて、目から、涙が零れる。
違う違う違う。
ただの偶然だ。
私じゃない。
私のせいじゃない。
どんなに言い聞かせても。
身体は正直に、怖いと叫んでいた。