レオニスの泪



発作なんだったら。

意識を失ってくれればいいのに。

そうして、二度と目を覚まさなくていいんだったら、そうしたい。

だけど、中々意識は、強情で、電源をオフにしてはくれない。


だから、分かる。

苦しくて話せないけど。

息が出来なくて辛いけど。


金森が、私を抱え込むようにして、休憩室まで歩かせてくれて、どこかに電話を掛けてくれて。


運が良かったのか悪かったのか、この件で、一番最初に私を診てくれた内科の吉田先生がまず来てくれて、その後、引き継いだ神成が駆けつけてきてくれたことが。

声が出せなくとも。

身体ががくがく震えて、力が入らなくても。


目が見えたから。


それは、分かった。



「葉山さん、もう、大丈夫ですよ。」



そう、言ってくれる優しい声も。

すっかり覚えた、ミントの香りも。







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