レオニスの泪
焦ったところで、何と言えば金森が納得してくれるのか、到底思いつかないのに。
「無理、し過ぎてんじゃない?」
彼女の優しさには気付いている。
金森は自分にも他人にも厳しいけれど、冷淡というわけでは決してなく、むしろ気遣いの人だ。
上司として尊敬している。
でも、今、この勧めに従ったとしたら、自分から逃げることになりそうで、頷く事が出来ない。
「病気じゃなくても、私は葉山さんに暫く有給取って貰うつもりでいたのよ。」
「え?」
強張る私の顔を、まるで仕方ないわね、とでもいうように、ふ、と笑ってから、金森は優しく話す。
「まだ確定ではないから、言おうか迷っていたんだけど…木戸さん、葉山さんを異動させようとしてるみたいなの。」
「………」
木戸、と聞くだけで、身体に緊張が走る。
先日、木戸が私に言った事は単なる脅しではなかったということだ。