レオニスの泪

焦ったところで、何と言えば金森が納得してくれるのか、到底思いつかないのに。




「無理、し過ぎてんじゃない?」


彼女の優しさには気付いている。

金森は自分にも他人にも厳しいけれど、冷淡というわけでは決してなく、むしろ気遣いの人だ。

上司として尊敬している。


でも、今、この勧めに従ったとしたら、自分から逃げることになりそうで、頷く事が出来ない。



「病気じゃなくても、私は葉山さんに暫く有給取って貰うつもりでいたのよ。」



「え?」





強張る私の顔を、まるで仕方ないわね、とでもいうように、ふ、と笑ってから、金森は優しく話す。





「まだ確定ではないから、言おうか迷っていたんだけど…木戸さん、葉山さんを異動させようとしてるみたいなの。」



「………」



木戸、と聞くだけで、身体に緊張が走る。


先日、木戸が私に言った事は単なる脅しではなかったということだ。
< 298 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop