レオニスの泪
「でも、その理由がどうも腑に落ちなくて。本部に抗議しようと思ってるのよ。木戸さんの言っている理由がおかしいもの。もしかしたら、パワハラなんじゃないかしらって思ってるのよ。」
「…どうして…」
驚きが口を衝いて溢れてしまい、それを金森が頷きながら拾った。
「やっぱり、何か言われてたんでしょう。木戸さんが葉山さんに明らかに度を越した感情を抱いていることは、周囲も気付いているくらいだもの、私が知らないわけ無いでしょう。」
更衣室に金森の声は静かに響く。
「それで、葉山さんが職務怠慢って、私の評価を差し置いてそれはないでしょ?幾ら好きだからって、公私混同、職権濫用は良くない。それに、葉山さんに異動されたらこっちだって困るわよ。」
ったく、男ってのはどいつもこいつもどうしようもないわよね、と付け足してから。
「だから、木戸さんが巡回に来る時には、休みに入るなりして、鉢合わせしないようにするといいわ。そうやって組んであげるから。とにかく今は、身体治すのが先。暫く有休使いなさい。わかった?」
「…ありがとうございます」
そう言い残して、更衣室から出て行く金森の背中に、私は深く礼をせずにはいられなかった。