レオニスの泪
ーにしたって…
いつかの雨の日。
神成が座って空を見上げていた、公園のベンチに座って、同じように空を仰ぎながら。
ー何しよう。
昼間の青空。
すぐ近くにある小学校のグランドから聞こえてくる、子供達の元気な声。
突然空いた時間。
家に帰れば、家の仕事が山程待っている。
けれど、そんな気分にもなれずに、かといって、のんびりすることに慣れてもいない。
手持ち無沙汰になると、人間は思い悩まずにはいられない。
ー発作を起こした時。
『葉山さん、もう、大丈夫ですよ。』
神成は私にそう言った。
初めて逢った時。
私は『大丈夫』に嫌悪感さえ持っていたのに。
どうしてか、神成の言う、『大丈夫』には今、抵抗を感じない。
それはきっと、裏打ちされた、『大丈夫』だからだ。
今回も、神成が来てくれて、安心して。
神成の言う通りに、呼吸して。
そして、ラクになった。
神成と居ると、私は『大丈夫』になる。
医者と患者の関係だから当たり前のことなのだけれど。
ー神成先生から見たら、私はただの患者のひとり。
それでいい。
それが正しい。
けど、私は?