レオニスの泪
迷う余地がない。


ーこれでいいんだ。


私だって、これでいいのに。

どうしてか、胸が、ざわざわして、五月蝿くて仕方がない。


自分はいつからこんなに依存してきてしまっていたのだろう。


神成という、童顔の精神科医に。


いつだって、苦しい時に助けてくれるヒトなんかいなかった。

そんな都合良く、ヒーローみたいなのが現れるわけないって。

そんなの、誰もが知っている事実だ。


だけど出逢ってしまった。

神成は、私が死にそうな時に、いつも突然現れる。



「ホント、やめてよ…」


木々の間から溢れる光を避けるように、手の甲で目を隠した。


蔑ろにされることに慣れっこのシングルマザーは。

そんな事くらいで、信じられない位惹かれてしまう。

勘違いしてしまいそうになる。



けど、この感情が厄介で。

時には、ピストルの弾程の、殺傷能力があることを、私はよく理解している。


自滅に追い込まれるだけだったらまだしも。


慧の事を巻き込むことになるんだ、と考えると、自分が最低に思えてくる。
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