レオニスの泪
玄関のドアを開けた先、背は小さめで、年配の働き者の金森が、紙袋を片手に持って、立っていた。
「良い匂いがしてるから、夕飯時だったわね。忙しい時間にごめんね。すぐ失礼するから。」
中へと勧めるが、金森は頑として入ろうとしないので、玄関先での応対となる。
「慧、おいで。いつも仕事でお世話になってる金森さんがいらしてくれたよ。」
気になるらしく、チラチラ視線を投げてくるので、慧を呼ぶと。
「こんばんはー!ママがいつもお世話になってます!」
どこでそんな言葉を覚えたのか(私しかいないけど)、敬礼をしつつ、金森に挨拶する。
「こんばんは。挨拶ちゃんとできて偉いね。こちらこそ、いつもお母さんに助けられています。」
金森は子供好きそうだという勝手なイメージは、どうやら当たっていたようだ。にこにこと慧の目を見て話している。
「これ、美味しいから、良かったら食べて。」
「え!いやいやそんな…」
「えーーーこれどら焼き?????」
紙袋から出てきたのは有名所のどら焼き。それがどら焼きと言うには、余りに大きかった為、慧が驚く。