レオニスの泪
「こら。慧…」

親としては、宥めたい所だし、恥ずかしいのだが、金森は構っている風はなく、むしろ嬉しそうに、にこにことしている。

「そうよ、生地がすっごくふわふわで美味しいから、食べてみてね。」

「ありがとうございまぁす!!」


慧は紙袋をがっちり身体に押し付けて抱えると、お辞儀して、トタタ、と奥へと駆けて行った。


「…、、家にまで来てくださった上にお土産までいただいてしまって…本当に申し訳ないです…」


慧の背中を目で追う金森に頭を下げると、彼女はいいのいいのと手を振る。


「私が勝手にやったことなんだから!あなたが気に病む必要はないわよ!」

むしろ、押しかけてきてごめんね、と付け足す。

「それより、、本題に入るけど…」

奥で、紙袋を抱えたまま、テレビの画面に夢中になっている慧を見ながら、金森は声のボリュームを落とした。






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