レオニスの泪
「折角休めって言ったのに、職場の人間なんかが押しかけるつもりはなかったんだけど…実は、木戸さんがー葉山さんは、病院の医者と関係があるって、派遣会社に伝えたらしいの。」


金森の言葉が理解できず、私は固まる。


「ーえ?」


「事実なの?」


事態は、知らない内に大きくなってきているようだ。


「しかも、不倫だって言うのよ。」


今度こそ、言葉を失った。
自分のことを差し置いて、木戸は何を偉そうに言っているのだろう。


「っ違います。」


思いの外、力が入ったせいか、声が強く出てしまった。

焦って、奥の部屋にいる慧を振り返るが、テレビに夢中な彼は気付かなかったようだ。

それに安心するのと同時に、どうしようもない不安にすっぽり包まれる。


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