レオニスの泪
もう大人だから、ブレーキはかけられる。

そう思ってるけど、自信がない。

だって、無自覚無意識の内に芽生えてしまった感情をどう制御すれば。

制御できるんだろうか。

こないだだって、私は彼を抱きしめてしまったじゃないか。

何とも思っていないと言い聞かせながら、否定しながらー彼の存在を腹立たしく感じながらも。


頭を抱えて、目を閉じても、もう覚えてしまった番号が浮かんできてしまう。


ーダメだってば。


何度こうして言い聞かせてきただろう。

だけど一向に、言うことを聞いてくれない。

自分、なのに。



「あー、やめやめ」

今度は口に出して、両手を伸ばして、立ち上がる。

今思い悩む事はもっと沢山ある。

木戸の事で、弱っているから、頼り甲斐のある人にどうしても気が向いている。

そう思い込む事にしよう。


「求人誌をもらってこよう…」


慧を迎えに行きがてら、スーパーに寄って、万が一に備えて職探しの材料を集めておこう。


慣れた職場を失うのは残念だし、痛い。

だけど今までだって、上手くいかないことばっかりだったんだから、別にこんなこと位で、駄目になったりしない。


ー自分は、強い。


周囲だってそう言った。

私だってそう思う。



神成だけが、真逆のことを、私に教えてくれたけれど。


難しいことは、考えないように、する。




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