レオニスの泪
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「あ、葉山さん!良かった。」



自転車を疾走させて保育所に着くと、事務室にいた先生が待っていたかのように飛び出してきた。



「すいません!遅くなってしまって…」


「いえいえ、お仕事してるんですから仕方ないですよ」


申し訳なさからがばりと頭を下げれば、優しく声を掛けられて、益々恐縮した。



「慧君、熱が上がってきてしまったので、病院に連れて行ってあげてください。今からだと―川上診療所だったらまだやっていますよ。」



「はい。」



保健室に行くと、慧がベットに寝かされていて、額には冷えピタが貼られている。



熱のせいで、顔が赤くなっていた。




「フクロウ役どうしてもやる!って言い張ってたんですけどね、説得して寝かせました。元気になったら、家で見てあげてくださいね。」





保健室の先生に笑いかけられて、私はすいませんと頭を下げる。





「………ママ………?」




慧がうっすら目を開けた所で、おんぶして保育所を出た。


土曜日は荷物が多く、カゴに入らなかった物は、手首に巻きつけた。




「慧、川上さんの所に行ってお薬もらってこようね。もうちょっと頑張ってね。」



後部座席に慧を乗せると、慧は頷きながらくたりと力なく座った。



「寒くない?これ着てなよ。」



自分の着ていたパーカーを慧に着せて、しっかりベルトを締めてあげてから、病院へと向かった。

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