レオニスの泪

いつもひとりで泣く時、厚めのタオルを持ってくる習慣がまだあって、保育所で慧も使う紐付きのタオルを、私はぎゅっと握り締めた。


その時。


ーーーーー。


誰かが走る音が聞こえて。

それが徐々にこちらに近づいて来る。

期待と恐怖とで、身を硬くして、咄嗟に口にタオルを充てた。

ジョギングの人かもしれないし、ただ急いでる人なのかもしれない。

通りすがりの人の事なんて今迄気にも止めていなかった。

もしかしたら自分が毎週この公園にいるのと同じように、この時間に走る習慣のある人なのかもしれない。

ーだけど。

柵で囲われていない、どこからでも出入りの出来る公園に、息を切らしてやってきた人物を見て、私はつい立ち上がった。



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