レオニスの泪
「祈さん、すみません。待たせてしまって…」
ひゅ、と風を切る音。
ミントの匂い。
シャツの感触。
速い鼓動。
熱。
自分は、今、何をしているんだろう。
「祈さん…?どうかしたの?」
力任せに、背中に回した私の腕を、神成は、やんわりと外そうとする。
「遅くなってしまって、ごめんね?あれから、何かあった?電話もなかったから、僕はてっきり大丈夫なんだと思っていて…」
でも、私は激しく首を振り、抗う。
悔しい。
こんなことをしても。
神成は、驚いている様子もない。
患者だから?
発作を起こしたばかりだから?
駆け寄って、抱き付くなんて予想の範疇?
情緒不安定だから???
じゃぁ、これはー?
「先生、好きです」
これも、信じてくれないのだろうか。
気の迷いだと、言われてしまうんだろうか。
訳が分からなくなっている自覚はある。
こんな行動、自分が一番信じられない。
「私、どうしたらいいですか…?」
また、恋をして。
こんなに苦しく泣くなんて。