レオニスの泪
当たり前のように、どちらも無言になり、虫の音がリリリ、と聴こえてくると。
私はハッと我に返る。
ー私、今何か口走った…
「…………?????!!!!!」
私はガバッと音がする程、力一杯、神成から放れた。
そしてー
「あ、、な、な……」
顔を真っ赤にして、後ずさり。
「すいませんっ!!!!!」
彼の顔をまともに見る事なく、全速力で家を目指して走った。
心の中で言ってた事を口に出してしまったー
掌を口に当てながら、右も左も前も見ないで、ただひたすら走った。
多分、私の通った道を、車が通っていたら、間違いなく轢かれていたと思うけど、そんなのもよく分からない位に気が動転していて、ぐるぐるして、気持ちが悪かった。
目尻に残る涙にも、呆れる。
ーなんて事を言ってしまったの。
絶対に駄目だって。
そう思ってたじゃない。
直前まで、自分に入る隙もないって分かってたじゃない。
だって。
自分には、、、慧がいるのに。
仕事で、子供で、自分で、手一杯なのに。
恋をする暇なんて、どこにもないのに。
ーどうしたらいいですかって…何言ってんだ、私。
神成はどんな顔をしていただろう。
きっと困ったに違いない。
なんて思っただろう。
こんな、子持ちの女が、何をふざけたことをと思っただろうか。