レオニスの泪
病院内は少し、混んでいて。



―この分だと全部終わって薬もらうまで、一時間ちょっと掛かるかな。



思わず壁に掛かる時計を見てから、ふっと溜め息を吐いた。



熱がある旨を伝えたが、順番は早くしてもらえそうにない。



慧を抱えながら、ソファの背にもたれかかった。


小さかった慧は、今や抱っこすると自分の身体から足がはみ出るほど大きくなって。


その身体の熱さと、荒い息遣い、汗で髪の毛が張り付いてしまった額に、複雑な感情が渦巻いた。




―生まれてきて5年、もうすぐ6年…何かしてあげられたことがあったかな。我慢ばっかりさせてきてしまった気がする。



そして、これから先もそれは続くのだろう、と。




―やばい…



急激に瞼が重くなり、必死で睡魔と闘う。



息が出来なくなってしまったあの後から、相当な疲れを感じていた。




―あー、一体なんだったんだろう。




発作みたいなものなのか、心臓が悪いのか。はたまた肺に異常があるのか。





『君、そのままじゃ、危ないよ』




無意識に閉じてしまった瞼。


真っ暗な世界に、ぼんやりと浮かんだ、あのベビーフェイス。
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