レオニスの泪
「うわっ…」
思わず叫ぶと、周囲の人達が驚いたように振り返って私を見た。
「あ……すいません…」
一瞬だけ落ちてしまった上、寝惚けてしまった事が恥ずかしくて、慧を抱えたまま小さくなる。
―やだ、あんなやつが出てくるなんて。
鳩尾辺りがムカムカしてきた。
童顔の顔と、口調がまるっきり合ってない。
ギャップ、あり過ぎ。
医者って皆ああなのかな。
ああいう話し方なのかな。
白衣を着ているから、かろうじて判断できるものの、あの男は外見だけでは、医者だなんて到底思えない。
―偉そうに語っちゃって。
助けてくれた人に向かって、こんなに反感を持つのは、失礼なのかもしれないが、如何(いかん)せん、腹が立って仕方がない。
―あれはきっと新卒の研修生かなんかだわ。もし、そうじゃなくてもなりたてほやほやに違いない。
そうなると自分と余り歳は変わらない筈だ。
どう考えても年下にしか見えないけど。
「葉山さん、葉山、慧さん。1番へどうぞ。」
色々頭の中で巡らせていると、看護師さんに呼ばれ、慧を抱き直してから、①と書かれた診察室に入った。