レオニスの泪





幸い、慧の熱は長引くことなく。




解熱剤も一度飲んだだけで済んだ。




日曜日の朝はまだ微熱でぼんやりしていたが、昼過ぎからは食欲も回復してきて、胸を撫で下ろした。




「ママー、僕ねぇ、焼きそばパンが食べたいっ」



まだ寝ていろと言っても、動きたくて仕方がない慧は、身体が軽くなったのでちょこまかと部屋の中を行ったり来たりしている。




「焼きそばパン??慧は好きだねぇ。わかった、ちゃんとお留守番出来るならペコルへ行って買って来てあげましょう。」



ぺコルとは、家から徒歩2分の所にある、葉山家御用達パン屋さんのことだ。



「やったぁー!あとね、コーヒーにゅうぎゅう!」



小躍りし出した慧に、ぷっと噴き出した。




「はいはい、コーヒー牛乳ね。」




言いながら、私はエコバックに財布とスマホと鍵を入れて玄関へ向かった。




「よろしくお願いします!」



「はい、いってきます!チャルダーマンのDVD観てて良いからね。」



おでこに冷えピタを貼ったまま、敬礼をして見送ってくれる慧に、頬が緩みっぱなしのまま、家を出た。


因みにチャルダーマンとは、チーズと犬が合体したみたいな主人公が出てくるアニメのことだ。
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