レオニスの泪
カルテⅩ
最後の休みの日。
慧を連れて、水族館に行った。
「ママぁ、見てみて!今、ジャンプしたの、クジラなんだって!」
円形になっている会場で、イルカショーを観ているのだが、始めに調教師のお姉さんから四頭の内、大きい二頭はオキゴンドウという鯨なんだと紹介されていた。
知っている鯨と比べると体つきは小さいが、イルカに比べると断然大きい。
にも関わらず、軽々と跳ねては観客を魅了している。
「本当だね、大きいから、水しぶきもすごいね。」
暑い季節はとっくに過ぎたのに、前方の席はびしゃびしゃに濡れていて、慧がそこに行きたいと言わないでくれて心の中で感謝する。
「楽しかったねぇー!」
「ね、すごかったね。ちび鯨」
平日のお出掛けに、慧は大袈裟すぎる程喜んだ。
天気も味方してくれたようで、気温は低めだが、陽射しがある。
空はすっきりと青かった。
会場から出ると、お土産コーナーで、慧に一つだけ、と言って選ばせた。
中々混雑していて、慧を見失わないようにしなくては、と思いつつ。
ー神成先生にも、何か買っていくかなぁ…
自分のお土産もチェックしたりする。