レオニスの泪

「ママ、僕、これが良い!」


慧の声で我に返った私は、ぼうっとしていた事を反省しながら、慧の差し出した折り紙を見る。

10枚入りのそれは、10種類の海の生き物が折れるようになっていた。


「これで良いの?」


小さければ人形でも良いかなと考えていた私は、慧の提案を意外に感じる。
とりわけ工作が好きな訳でもなく、器用でもない、外遊びが好きな慧が、折り紙が欲しいなんて。


「うん!」

けれど、慧はそれを両手で持ちながら、ホクホクした顔をしている。


「わかった。いいよ。」
「やったぁーー!!!」

OKを出せば、更に表情を綻ばせた。


私はといえば、結局何も選ばずに、慧の折り紙の会計だけ済ませると、水族館を後にする。




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