レオニスの泪
外に出ると、爽やかな風が脇をすり抜けていく。
昼過ぎの太陽の光が眩しい。
―なんか、元気ないな、私。
ペコルに向かって足を踏み出しながら、よくわからない虚無感に襲われて、首を傾げた。
特に今、日常に不満がある訳じゃない。
充実しているといえば、している。
18の頃は、同年代と比べて自分自身が遊べていない、得損なっているという劣等感にも似た負の感情が渦巻いていたが、今となってはもうどうでもいいことだ。
―ああでも。遠くにいけるなら行きたい。
全てをほっぽり出すことが、許されるのならそうしたい。
何も考えずに、ただどこか遠くへ。
責任というものを全て置いて。
一人きりで、静かに電車なんかを乗り継いだりなんかして。
ペコルに行く近道として、公園のど真ん中を突っ切った所で、そんな自分を鼻で笑った。
―結局逃げじゃんか。
これでは、慧の父親のようだ。
慧を置いてどこかへ、なんて。
考える事も、思いにのぼることだって、あっちゃいけない。
―苦しい。
また、酸素が薄くなった気がする。
「……ふぅ…」
昼過ぎのペコルはまだ混雑していて。
自動ドアの前、軽く深呼吸をして中に入った。