レオニスの泪
帰りの、駅のホームは、かなり混雑していた。
ーもう少し早目に帰れば良かった。
帰宅ラッシュではないが、このままだと座る事は叶いそうにない。
改札を抜けた所にある銀の時計台は、待ち合わせスポットになっているのか、誰かを待っているらしい人が何人もいた。
更にその周囲は、多くの人が行き交っている。
私も、その直ぐ傍を通り過ぎーーー
「………」
見知った顔を、その中から見つけて、思わず立ち止まった。
というより、あまりの衝撃に身体が固まった、という方が正しい。
「ママ?」
手を繋いだ慧が、不思議そうな声で私を呼ぶが、私の視線は一人の人物に釘付けになっていた。
「勇…吾」
息が、止まるかと思った。
時間も、止まったかと思った。
数歩先、あんなに自分を悩ませていた存在が、居る。
愛しくもあり、憎くもあり、今ではもうそれは未練というべきなのか、言葉で説明する事ができず、自分自身理解できない感情を、再会したならぶつけたいと願っていた相手が、直ぐそこに。